
白癬菌の患者数を把握するのは難しいです。薬の販売量から、総計1500万人という推計の数字が出ています。薬局の店頭で抗真菌剤または抗白癬剤を購入する人数を集計したとしても、患者が考えるのはあくまでも漠然とした「水虫薬」です。そのうちの多くが自己診断で薬を購入しているため、薬を購入しているから白癬菌の患者は1500万人だ、と判断するのは難しいです。
一般的に、病院の皮膚科での患者頻度を見ると、皮膚科患者全体の中で真菌症患者は10%前後です。そして、北よりも南にいくにしたがって割合が増える傾向にあります。
真菌症患者のなかで白癬が占める割合は90%、さらに足白癬の割合がこのうちの70%くらいだと言われています。 実際には、真菌症かと思って受診した結果違っていたというケースもあるため、真菌症として受診する患者はもっと多いと思われます。
皮膚科の患者のなかでは、アトピー性皮膚炎や接触皮膚炎(かぶれ)などの湿疹皮膚炎群が最も多く30〜40%、真菌症はそれに続いて多い症状です。

足白癬の患者は、もちろんはじめから足白癬または水虫として病院にいくこともありますが、実際には他の皮膚病のために病院を受診してたまたま足白癬を発見、ということがおおいです。また、実は足白癬だった、というパターンで発覚する患者は、年齢とともに増えることがわかっています。
ある中間的なサイズの都市にある皮膚科では、50歳以上の患者の約25%が足白癬を持っている、という実際の統計があります。(10年ほど前のものですので、現在はもっと増えている可能性もあります)仮に、日本の人口構成をこの都市と同じものと考えて換算した場合、日本の50歳以上の人は4000万人以上で、そのうちの1000万人が足白癬を持っているのではないかと考えられます。
前項で、50歳以上の足白癬患者の割合は1000万人以上にのぼるのではないか、と書きました。年齢とともに足白癬患者の割合は増えるので、40代以下では足白癬患者の割合はやや減ると思われますが、40代以下の世代の人口に占める割合は高いです。
この方法で見ていくと、少なく見積もっても全人口のうち1500万〜2000万人くらいの足白癬患者がいるのではないか、ということになりそうです。
前項で、足白癬患者は日本に1500万〜2000万人くらいはいるのではないかと推計しました。こうなると、足白癬は、皮膚科に限らず日本人にとっても大きな比率を占める皮膚病であるといえます。
一度は病院で診察してもらっても、一度離れてしまうと、足白癬またはそのような症状が全て「水虫」として問題になります。「あああ・・・また足白癬か?今度は水虫か?」と慌てるため、みかけの足白癬の頻度は、さらに高いことになります。
それまでにかゆかったりしめったりして不快だった趾間型(足の指のあいだが白くふやけたり、皮がむけてくるタイプ)や小水疱型(足の裏や指の付け根などに小さな水ぶくれをつくるタイプ)の足白癬が、年齢とともに自覚症状の少ない角化型になっていく場合があります。
角化型になると、症状がなくなる上に、見た目も乾燥するので、足の裏が硬くなる年齢的・生理的な角化傾向と区別するのは難しくなります。そこで本人は、自分の水虫は治ったと思い込んでいるケースはしばしば見受けられます。このように、足白癬患者である自覚が消えていくケースもあるために、正確な足白癬や水虫の患者数を確定させるのは難しいのです。
ある中間的なサイズの都市にある皮膚科の統計を見ると、以下のことがわかります。
40代以下の年齢層では、足白癬を持つ人の割合そのものは低いのですが、人口は逆に多いため、人生の活動期・生産期の人々に足白癬の患者が多い、といえます。活動期・生産期の人にとっても、足白癬は重大な皮膚病または職業病です。
白癬で皮膚科にかかる人の、季節的特徴はどうでしょうか。日本医真菌学会が行った調査によると、足白癬のの外来受診者は5月から急増し、夏が終わるとともになだからに減少します。
患者の多くは、足白癬の症状で皮膚科にかかった人、つまり、この時期に症状が出たかあるいは悪化したため受診した人々です。 そして、治療によってとりあえず症状が治まると受診を止めるが、翌年また同じことを繰り返す、というパターンが示されています。
水虫は、治りにくく再発しやすい病気です。再発を防ぐためには、治療の結果ほとんど正常に見えるようになってもなお診察を継続しなければなりません。
しかし症状が消えると、ほとんどの患者はこれさいわいと治療を止めてしまいます。症状が見えないだけで治癒したわけではないため、再発するというわけです。根気よく治療を続けなければならないところを、本人にその気がなくて、皮膚科医だけが患者に治療を続けさせようとしても、あまり完治の望みは高くないのかも知れません。治療は、医師と患者の共同作業なのです。
身体の他の部位の病気の引き金になる可能性がある場合は、水虫治療が皮膚科医にとって重要な意味を持つと思われます。中年以降の患者で頭や顔に白癬ができた時には(たむし)、足の白癬が感染源になっている可能性があります。
また、子供の足白癬患者がいる家庭には、必ずその家庭に他に足白癬患者がいます。しかし、家庭内の該当する他の患者のほとんどは、受診時に自分の足白癬のことは頭にないのです。このような状況を患者や患者の家族に話して、足白癬感染の効果的な予防方法を考えることが、皮膚科医の重要な仕事のひとつです。