
実際に足白癬(水虫)の症状が出ていなくても、白癬菌を保持している人は予想以上にいます。もちろん菌の数や密度はさまざまで、症状が出ている人に比べればその数は少ないのです。
足白癬患者からその生活環境にばらまかれた白癬菌は、それが人の足についてからすぐに足白癬を発症するわけではないのです。一度も皮膚についた菌が洗い流されることなくて、菌の増殖に都合の良い条件であったとしても、定着するには時間も必要なのです。
これは、あらゆる臓器の感染症疾患に共通して言えることです。その菌が付着しても、全ての人が病気なるわけではなく、抵抗力のほうが強く発病を抑えるケースもあります。 発病するのは、宿主の抵抗力を超えて、菌の数が一定以上に増える場合です。
菌がとりついてから、宿主の抵抗力を超えた結果発病するまでの期間は、潜伏期とよばれています。潜伏期は、病原菌の種類によって違いがあります。一般に急性で激烈な経過をとるものは潜伏期が短く、潜伏期の長い菌では症状がおだやかで重い病気を起こすことは少ない、という傾向があります。
この点もある意味、菌と宿主との馴れの関係を示しているといえるかもしれません。白癬菌の潜伏期ですが、足白癬の場合はわかっていません。先述した犬小胞子菌によるたむしの場合は、1〜数週間の間に症状が出ることが多いです。人を宿主とする紅色菌によるたむしは、潜伏期はもう少し長いのではいかといわれています。
足白癬の潜伏期はわかりにくいのと同時に、人によってかなりばらつきがあります。白癬菌感染は、一般的な他の感染症とは違い、菌の侵入・増殖に対する宿主側の反応はさまざまなのです。
感染力の強い菌(コレラ菌や、はしかウィルス等)が人体に侵入した場合、全ての人が大体同じような反応を見せて、同じような経過で病気になります。
しかし、白癬菌の潜伏期の長さや症状の出かたは、人によってあまりにも違うのです。人体のある程度決まった反応以外に、なにか別の影響が働いていると考えることができるのではないでしょうか。
白癬菌が皮膚についてから発病に至るまでには、いつくかの条件が必要です。特に、皮膚側の、菌がついた局所の条件が大きく影響すると考えられます。
もし白癬菌が手の皮膚についた場合、生活するうえで多くの人は一日に数回手を洗うし、いつも乾いた外気に触れた状態のなかで動いています。このため、手の白癬は足白癬よりもずっと少ないことは容易に想像できます。白癬菌が皮膚について発病する条件として最も重要なのは、皮膚表面の温度と湿度が白癬菌好みに保たれることでしょう。
足白癬は、靴を履く習慣によって作り出された皮膚病のひとつ、と言えます。靴を履く習慣がなければ、たとえ足の皮膚に白癬菌がついて少し増えたところで、発症するほどに菌は増えないと思われます。
しかし、人が靴を履く生活を始めたために白癬菌が皮膚について発病するために十分な温度と湿度の環境が作られたのだと思われます。これをきっかけにして、他部位に常在菌としていた白癬等、今となってはメジャーな病気の一つになったみずむしが登場しました。
また一方、産業衛生の側面から、安全のために厚い靴を1日中はくことを強いられる結果、水虫に代表される足の指のあいだの皮膚病がクローズアップされてきています。高温多湿の靴の中には、白癬を含めた皮膚病を起こしやすいのです。足白癬には、文明病として側面もあるのです。
人が靴をはき出す以前には、既にヒトに寄生できるように進化した白癬菌群も、陰股部や有毛部あるいは足等の角質が厚い部分あたりにいてなりを潜めていたと思われます。そしてその状態で、自分たちが出す代謝産物によって、他の種の細菌等がその場に定着するのを妨げる常在菌の1つとして共利共存の関係にあったとも考えられるのです。
イギリスのフレミング博士は、ペニシリウム属のアオカビの周囲に細菌が生えないということを発見し、抗生物質として役立つ「ペニシリン」を発見しました。このペニシリウムと白癬菌群とは、実は、分類上近しい菌なのです。白癬菌群も、ある種の抗生物質を出すことは、実証されています。
足白癬や、その他の常在菌の感染症は共通して、局所に菌がついてから発症するには他の条件が大きく影響します。こうして起きた病変の治療には、(1)局所の条件の改善が必要(2)病気が見た目軽くなっても、残っている少量の菌の根絶が難しい、といった特徴が挙げられます。
これは、足白癬がもはや常在菌に近い性格を持ち合わせているからだ、と考えられます。白癬全般では、悪性リンパ腫や免疫不全、糖尿病、肥満などが、また足白癬においては、足の高温多湿の環境が、その菌が増えるのに有利な条件といえます。
もっと小さい集団、たとえば家庭で見ていくとどうでしょうか。足白癬患者である子供には、その両親(特に父親)に足白癬が見つかる確率が非常に高いです。一般的に子供の足白癬はあまり多くはないので、白癬菌を家庭内の他人からもらってる可能性は高いといえます。足の皮膚に見た目変化がない子供を選んで、白癬菌があるかを調べ、その家族にみずむしがないかどうかも確認する、という調査をしました。
これらの子供を、家族の中に白癬菌患者のいるグループといないグループに分けた結果、患者がいるグループの子供には白癬菌を持った子供がやはり多かったのでした。やはり、共同生活の場あるいは家庭が、足白癬がうつる場になっているのです。
ある寮で、20数名の女性に足白癬が集団発生したという例もあります。 足を調べたところ、たしかに足の指のあいだが白くふやけていたり皮がむけたりという、いわゆる水虫の人が約半数いたのですが、原因菌を詳しく調べてみると、見つかったのは数名だけで、しかもそれは1つの菌種に限ったことではありませんでした。つまり、誰かの菌がうつって広がったとは考えられない状況だったのです。
結局、原因は制服の靴にあると思われましたので、治療する一方でなるべく足を清潔にして乾かしておくように指導し、問題はなくなったのです。
しかし、見た目では全然水虫の状態になっていない数名の足から、様々な白癬菌が発見されるケースもありました。このことは、集団生活において、白癬菌患者の病変部からばらまかれた菌によって、さらにまわりに患者が増える可能性があることも示しています。このケースは、集団生活における水虫のコントロールについての貴重な気づきを与えてくれています。
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水虫は自己判断が難しい病気の1つです。
自分では水虫と思っていても、実は違う皮膚病であったり、 また、自覚症状がなく水虫に気づかない場合もあります。
水虫の診断方法は、顕微鏡検査で水虫の原因である菌がみつかるかどうかが、 判断のポイントとなります。
「もしかしたら!?」なんて思っている方、 少しでも不安をお持ちの方は、こちらをご覧下さい。
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