
同じ微生物といっても、ウィルス、リケッチア、細菌、カビでは構造や代謝が違うので、これら全てによく効く薬というのはありません。
足白癬の原因菌である白癬菌の一種は、すべてカビの仲間です。カビに対して用いられる薬を、抗真菌剤といいます。現在に至るまで、いろいろな薬が抗真菌剤として用いられてきました。
この中には、抗真菌活性が高いものと低いもの(カビに対する作用の強いものと、弱いもの)から、抗菌スペクトラムが広いものと狭いもの(数多くの種のカビに効くものと、一部のカビだけに強い抗真菌活性を示すもの)まで、いろいろな種類の薬があります。
足白癬を治療するには、まずその病変の正確な診断が前提になります。足白癬の症状や検査法についての知識が不可欠ですし、それと同時に足白癬以外のさまざまな皮膚病を見分ける必要もあります。つまりこのことは、単に足白癬の診断と治療にとどまらず、広く皮膚科医としての知識を問われる分野なのです。
診察と検査が済んで足白癬だという診断がくだされれば、治療が始まることになります。治療に際してやっかいなのは、足白癬が皮膚について増えたカビと局所の条件とが合わさってできる病気のため、抗カビ剤をつけてすぐに治る病気ではない、ということで。 治療には、薬と足のケアの両方が必要になってきます。
抗真菌剤にかぎらず一般的に、市販薬には大きく分けて医師向けの製剤と、薬局の店頭で売られている製剤(OTC薬)(*1)があります。
一般に、OTC薬は医師向けのものにくらべて主成分の濃度が少し低めに設定してあり、抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤なども配合されています。そのため、OTC薬のほうが効き目がおだやかで対象となる病気や症状を広めになっています。
(*1)OTC・・・Over the counterの略 薬局のカウンターで購入可能な薬のこと
以前は、足白癬の患部の状態(ふやけた趾間型か、乾燥した小水疱型か等)によって、液剤と軟膏剤との使い分けがされていました。 液剤でアルコール溶液になっているものは病巣に対してやや刺激が強く、患部を乾燥させる傾向があります。
逆に軟膏剤は、使用後足がしばらくべとつくため、患者の好みがあると思われます。液剤とクリーム剤では、有効性の差は特にありません。現在の新しい市販薬では、かぶれやすさの差も特に見られません。これらの特徴を考慮したうえで使ってみて、使い心地を確認した後に最も使いやすいものを選ぶのがいいでしょう。
粉末剤やスプレーの抗真菌剤は、医薬品としては発売されていません。共同の施設などで利用されている靴や衣類等に、足白癬予防を目的として使用されることが多いようです。粉末剤やスプレーは、使い方が簡単で、治療にかかる時間が短時間で済みます。患者のコンプライアンス(*1)向上の点から見ても、今後注目の剤型といえます。
(*1)コンプライアンス・・・ある治療法が、患者にどれくらい受け入れられているかを表す用語。コンプライアンスがいいことは、その治療法の重要な評価点となります。
軟膏の種類は以下の3種類が挙げられます。
抗真菌剤は水に溶けにくいので、溶液にするにはいろいろな有機溶媒が用いられます。有機溶媒のなかでも、低分子のアルコール類は乾燥性に優れているため、使用感が好まれます。
その反面、湿って柔らかくなった患部やただれに対しては刺激が強い、という難点があります。そのため、副作用はクリームや軟膏に比べて発生する割合が高くなることが多いです。
そのため、溶解剤を含まずに主剤を懸濁させただけのローション剤は有機溶媒による刺激が少ない傾向があります。期待できる基剤といえるでしょう。
外用抗真菌剤の剤型は、主剤の抗菌スペクトラム(*1)、基剤に対する主剤の溶解性、特性、使用目的など、いろいろな条件の組み合わせによって決定されます。
基剤として抗真菌剤に利用されているものには、液剤(ローション等)、軟膏、ゲル、粉末やスプレーがあります。それぞれ目的にあわせて使用されます。
(*1)抗菌スペクトラム・・・ある抗菌剤がどのような種類の菌に対して有効か、を表します。数多くの菌に対して有効な場合、「抗菌スペクトラムが広い」と表現します。
外用抗真菌剤は、主剤としての働きを持つ抗真菌物質を基剤(*1)に含ませ、患部に直接塗ったり貼ったりして患部に作用させることを目的とした製剤です。
白癬をはじめ、表皮の一部である角層やつめ、毛などに寄生する真菌症(表在性真菌症)のほとんどの病型は、まず最初に治療に使うのは外用剤です。現在最も広く普及しています。
(*1)基剤・・・皮膚科で使用する外用剤は通常、油脂やアルコールなどに薬理作用を持つ主剤を配合して作られます。この場合の油脂やアルコールなどを基剤といいます。
以下に、外用の抗真菌剤の利点と欠点を挙げます。
抗真菌剤には、たくさんの種類があります。処方する際には、どんな種類のカビに、またはどんな病気にどれだけ効くかが問題になります。治療に際しては、その病気の要因になるカビに効く薬でないと意味がありません。
また抗真菌剤は、局所投与のもの(外用剤)と全身投与のもの(内服剤、注射剤)に大別されます。対象となる患者の状況によって使い分けられるように工夫されています。皮膚科医は、抗真菌剤それぞれの特徴も考慮に入れながら、これら剤型を使い分けているのです。