
足白癬や爪白癬に使える内服用抗真菌剤は、つい最近まで30年間にわたってグリセオフルビンのみでした。グリセオフルビンはカビの一種が出す代謝産物から発見され、白癬菌のみに効果があります。成人では1日3〜4回、3〜4錠を飲みます。
薬は腸管から吸収され、皮膚の角層に運ばれて抗菌作用を発揮します。しかし、内服による角層中の薬剤濃度では白癬菌殺菌の力はなく、その発育を止めるのみです。菌が皮膚からいなくなるためには、爪や角層が代謝し新しく生え変わって菌のいる古い部分がなくならなければなりません。
内服用抗真菌剤のみで治療を進める場合、一度治療を始めたら足白癬の場合でも4週間以上にわたって薬を飲み続ける必要があります。爪白癬の場合、手の爪では3ヶ月以上、足の爪では6ヶ月以上かかる場合もあります。
この方法で爪白癬を治療した場合の有効率は50%以上あるのですが、再発も多く見受けられます。 理論的には、有効な薬剤濃度が角層内にあり時間さえ十分にかければ100%完治し再発もないはずなのですが、実際にはそうはなっていません。
その理由は不明ですが、爪の周囲のどこかの部分が極端に生え変わりが遅い、ということも理由のひとつに挙げられるかもしれません。特にお年寄りは、爪の生え変わりが遅いことが知られています。
この薬は脂溶性なので、油脂分の少ないほうに偏った食生活の人は、グリセオフルビンの腸管からの吸収が悪くなりがちです。副作用としては、胃のもたれ、食欲不振、肝障害や日光に対する過敏性の皮膚炎を起こしやすいことがありますが、その頻度は低く安全な薬です
従来からのグリセオフルビンに加えて、最近はイトラコナゾールとフルコナゾールが白癬治療に使用されるようになりました。また、テルビナフィンも市販される予定になっています。白癬治療薬の選択肢がますます広がっています。 表在性白癬のいくつかの病型に対してその効果は、新しい内服抗真菌剤はいずれも、外用薬やグリセオフルビンとひけを取らないです。
また、これらの新しい内服抗真菌剤は白癬以外の多くの表在性真菌症にも効果を発揮します。ある患者の水虫の原因が足白癬ではなくカンジダ症だった、といった場合に、新しい内服抗真菌剤での治療が効果がある可能性が出てくるのです。
足白癬の治療期間は、やはり1ヶ月以上を見る必要がありますが、再発率等のデータはまだありません。
爪の真菌症は、白癬菌以外のカビによるものがかなり多いことがわかってきました。こうした爪真菌症は、最近増える傾向にあります。爪白癬以外の爪真菌症の診断は難しいため、今までは見逃される傾向にありました。
こういったケースの爪真菌症の場合、グリセオフルビンは全く効きませんが、新しい内服抗真菌剤は効果があります。爪白癬の治療期間や再発率等に関するデータは、現在確認中です。
新しい内服抗真菌剤の副作用には胃腸の障害がありますが、それほど多くはありません。イトラコナゾールやフルコナゾールは、他の薬との相互作用で副作用が出やすくなることが報告されています。たくさんの薬を服用している患者は注意が必要です。相互作用が報告されている薬として、ターフェナジン、リファンピシン、シクロスポリン等があります。
皮膚科医は、抗真菌剤を処方する場合には患者が他にどんな病気を治療しているかをチェックし、必要なときには患者のその病気の主治医に確認したりもします。しかしこういった場合は、患者自身が服用している薬について把握しておくことが大事です。抗真菌剤はどんどん改良されて市場に出てきます。新しい薬の効果の範囲は次第に明らかになっていくことでしょう。
完治には、その後もさらに根気よく治療を続けることが大切です。
足白癬の治療は、現在は原則として下記の2本の柱から成り立っています。
現在市販されている水虫薬は、その全てが抗真菌作用を売りにしています。それらには、皮膚の状態を改善する働きはありません。 発売されている薬剤の開発で、治療効果はどれくらあがってきているものか、足白癬の治療法とともに説明していきます。
趾間型足白癬、小水疱型足白癬の治療には、主に外用抗真菌剤が使われます。従来型の薬は1日2〜3回塗布しますが、新しい薬は1日1回のみのものがあります。
治療を始めてから4週間後に、症状が回復し白癬菌が消滅する患者の割合は75〜80%くらいです。従来型の薬とクロトリマゾール以降の新しい薬との間に、あまり差はありません。この数値は体幹部にできるたむしやいんきんたむしの患者の回復の割合よりも劣ります。それは足の皮膚に薬が浸透しにくいことや、皮膚の角層が厚くて菌の排出に時間がかかっていることが理由に挙げられます。
前項でも述べたとおり、従来型の薬と新しい薬で治療効果があまり変わらないのは、奇異にうつるかもしれません。白癬の症状は、白癬菌由来のかぶれ反応によって起こります。
しかし、これら抗白癬剤は、白癬菌を殺すかその活動を抑えるためのもので、皮膚から白癬菌を積極的に取り除くものではありません。かぶれの原因物を皮膚から取り除いたり、皮膚がかぶれの原因物に触れないようにする働きはなく、ましてや炎症を抑える作用はごくごく小さなものなのです。こうして抗白癬剤の位置づけを考えてみると、症状の消失に時間がかかる理由が理解できます。
従来の薬と新しい薬の症状の改善率に変わりがないということは、薬が菌を抑制する働きが自然治癒にかかる速度を超えていて、さらにピークに到達しているから、と考えることができます。
ただ、新しい薬は従来のものと何も変わらないのではなく、これまで以上の抗真菌活性が期待できます。従来の薬では不可能だった、より深い場所に潜伏している白癬菌にも効果を発揮できるのです。こういった部分の従来の薬との差は、もし治療を4週間で打ち切った場合の再発率とか、十分に治療した後の数年後の完治率に今後反映されるのではないかと思われます。
足白癬治療は、4週間では不十分です。皮膚科医の多くは、数ヶ月以上にわたって根気よく治療を続けるように勧めています。
爪白癬の治療のためには、数ヶ月以上にわたって薬を飲み続けなければなりません。また、角化型足白癬と同様に、白癬菌をばらまかないために外用抗真菌剤を併用します。ただし現在のところ、治療成績は他の足白癬に比べてもあまりよくありません。しかも治療をやめると、かなりの割合で再発します。新しい内服抗真菌剤が爪白癬にどれだけ効果があるかを期待します。
従来の外用抗真菌剤は、角化型足白癬に対して全く効果がありませんでした。新しい外用抗真菌剤が効く可能性はありますが、それを証明できる十分なデータが現時点でありません。そこでやはり、角化型足白癬の治療には現在のところ、グリセオフルビン等の内服抗真菌剤をまず服用します。薬の服用期間は3ヶ月以上が目安です。その頃には、80%以上の患者に症状の改善が見られます。
しかし、内服抗真菌剤を服用しても、表面の白癬菌は生きています。そこで、周囲に白癬菌をばらまかないために、同時に外用抗真菌剤を使うようにします。