
日本で使われている外用抗真菌剤一覧

抗真菌剤あるいは抗白癬菌剤は、第二次大戦前後(1940年代)までは、抗真菌剤とその他の細菌などの微生物に対する薬と特に分かれていませんでした。当時、真菌による病気として知られていたもののほとんどは皮膚に寄生するものでした。皮下や内臓に病気を起こすカビについては一般的ではなく、また患者もごくわずかでした。
内臓の真菌症が一般に知られるようになったのは1960年代からで、さらに医学上大きな問題になったのはごく最近のことです。臓器移植やエイズなどで極端に抵抗力の落ちた患者が増えたのがきっかけでした。
第二次大戦前には、カビによる病気は白癬菌によるものが圧倒的でした。しらくも(頭部白癬)、水虫(足白癬)、たむし・ぜにたむし・いんきんたむし(体部白癬、陰股部白癬)が代表的なものでした。
第二次大戦前に、カビによる皮膚病に広く使用されていたのはヨードチンキです。ヨードチンキは、細菌に対する働きや特に高くはなかったのですが、種々の微生物による病気に手軽に使えたのです。
また、この時期にはサリチル酸も使われていました。同じく細菌に対する働きや特に高くはなかったのですが、低刺激で、白癬菌がいる皮膚の角層を溶かす作用がありました。今日でも足白癬の大衆薬に配合されることがあります。
1940年代後半には、水銀を含む抗真菌剤が登場しました。当時、外用剤としては広範囲の種類のカビに効いて抗真菌活性も相当なものがありましたが、今日ではその毒性のため、全く使用されていません。
1950年以降に登場してきた薬剤の多くは、白癬もしくは同じ表在性真菌症のカンジダ症等、ごく限られた病気のみ有効なものでした。
トルナフテート、ハロプロジン、シッカニン等は白癬に対して有効で、ナイスタチン、トリコマイシン、ピマリシン等はカンジダ症に対してのみ使われます。これらの薬剤の効き目は、最近の薬に比べても目だつほどには悪くありませません。これらは、薬剤の価格が安いため、時々現在でも使用されています。この時期に、内服薬のグリセオフルビンが出現しました。
1970年代半ばに、クロトリマゾール、ミコナゾールなどの「イミダゾール系」と呼ばれる外用抗真菌剤が出現しました。
イミダゾール系の薬は、これまでの薬より白癬菌にたいする抗菌価が優れているうえに、抗菌スペクトラムも白癬菌からカンジダ、癜風(でんぷう)菌までと広く、副作用が少ないものでした。あっという間に外用抗真菌剤の主流になって以降、多数のイミダゾール系の真菌剤が出てくるきっかけになりました。
またこの時期にはエキサラミドやトルシクレート等白癬菌にのみ効く薬も使用されていましたが、イミダゾール系の薬剤が圧倒的なシェアを誇っていました。
これらは、1日に2回患部にすり込むように塗ることになっています。使用感は、ややべとつく以外はほぼ満足できるものでした。 最近発売された新しい外用抗真菌剤に比べると安くて使いやすいため、現在でも広く使用されています。
1986年に、ビフォナゾールが発売されました。
この薬は皮膚内での貯留性が高いことが最大の特徴で、1日1回の使用で従来の薬と同様の効き目があることが証明されています。これは、患者が薬を使用する手間を省く上でめざましい進歩です。これ以降の外用抗真菌剤の多くは、1日1回のみの使用を目指すようになっています。
近年発売されている外用抗真菌剤は、共通して高い抗菌活性と皮膚貯留性を持っていますが、抗菌スペクトラムに関しては、以前と同様に大きく2つの流れが見られます。
白癬菌、カンジダ、癜風菌等に広いスペクトラムを示すもの・・・イミゾダール系薬剤、テルビナフィン、アモロルフィン、ラノコナゾール等
これらの薬の抗菌価は、白癬菌やカンジダに対してこれまでのものと比べて非常に高い値を示しています。副作用の発症率はいずれも2%以下です。その内容も、刺激感や接触皮膚炎等で重いものはなく、またほとんどの副作用は使用を中止することで容易に回復します。
白癬菌にのみ特異的に高い抗菌活性を示すグループ・・・ブテナフィン
白癬菌に対してはかなりの効き目がありますが、カンジダにはほとんど効き目がありません。また、副作用の出方も低いものになっています。先のグループとともに最近発売された外用抗真菌剤は、いずれも皮膚への貯留性に優れていて1日1回の使用で十分な効果が期待できます。
これまでに挙げた新しい外用抗真菌剤が順次発売されて、足白癬全体の治療成績はよくなってきています。外用剤のみでは効果がない、というのが通説であった角化型の足白癬や爪白癬にも、ある程度の効果があることが確認されつつあります。
現時点ではまだこれらの新しい外用抗真菌剤では、治療に内服用の抗真菌剤の併用も必要な表在性真菌症がいくつかあります。例えば、全身の皮膚に広く症状が出た場合や、角化型足白癬、爪白癬全般が当てはまります。こうした外用抗真菌剤の治療成績がどこまで伸びるかは、今後の結果を見る必要があるでしょう。